コンパクトカセットテープ・タイプ3の部屋

最終更新日1999年7月24日
SONY DUAD tape

DUAD stratum


【概要】

 現在、コンパクトカセットテープを用いたデッキのテープセレクターには3つのポジションが存在している。
 Type-1(ノーマル)/Type-2(クローム)/Type-4(メタル)であり、なぜか「Type-3」が抜けている。
 しかし、かつてはちゃんとType-3ポジションテープがあったのだ。
 写真は最後まで残っていたType-3ポジションであるソニーのDuadテープ。
 このType-3は「フェリクローム」と呼ばれ、ノーマルテープの磁性層とクロームテープの磁性層を二層に塗った代物であった。
 録音はノーマルバイアス、再生はクローム用の70μs。
 したがって、自動テープポジション検出用の穴も開いていない。
 オートテープセレクタのデッキではノーマルポジションとして認識される。
 と、思っていたらこのたび、タイプ3の検出孔がソニー案として検討されていた資料が発掘されました。
hole
幻のタイプ3テープ検出孔
資料御提供はゾウリムシ様です。
【ゾウリムシ様の御意見】

フェリ・クロームテープ(TYPE-IIIテープ)は、自動検出に対応していないとのことでしたが、ソニーでは、TYPE-IIIテープについても自動検出できるように、対応を考えていたようです。
図(添付ファイル)には、「(ソニー案)」とあります。
添付ファイルにあるように、TYPE-IIIテープの自動検出孔は、メタルテープとハイポジションテープの中間のような位置にあることがわかります。
すなわち、メタルテープと真ん中の穴が同じで、ハイポジション兼用の、誤消去防止孔の横の穴がないやつですね。
しかし、この検出孔に対応したデッキや、この検出孔を持ったTYPE-IIIテープを見たことがないので、また、ここのH.P.に紹介されているように、ソニー製のデッキでさえ、TYPE-IIIテープに対しては手動切り替えだったということなので、結局、採用されずに終わったのでしょう。
さらに、この図にある検出孔の位置では、現在のオートテープセレクタのデッキにかけると、メタルテープと誤って認識される可能性があり、きわめて危険であります。
おそらく、このことから採用されなかったのであろうと考えられます。

参考文献:ホビーエレクトロニクス(9)「カセットデッキ」・阿部美春(著)・日 本放送出版協会(昭和55年・刊)・・・125ページから126ページ「5・7の (3)自動テープセレクター」


 世界的にもソニーのDuad、 BASFのPRO3(FCRシリーズ)、ScotchのCLASSIC、 アイワのFeCr(ソニーのOEMか?)、 デンオンのDX5の5社しか発売しなかったと思う。
 改めてカウントしてみると、意外に多くのメーカーが発売していたものだ。

master
写真はけんぱん様御提供のスコッチmaster3

DENON DX5
写真はけんぱん様御提供のデンオンDX5

 ソニーDuadカセットの注意書きによると、再生時はノーマルポジション(120μs)でもいけるが、その場合は高域上がりになるので、トーンコントロールが必要とのことである。

 1977年tape sound誌の記事によるとDuadのスペックは以下の通り。

<物理特性>
●磁性体:ガンマヘマタイト/二酸化クローム
●ベース材:強化ポリエステル
●ベース厚:12マイクロメートル
●磁性層厚:6マイクロメートル
●テープ全厚:18マイクロメートル

<磁気特性>
●保磁力:320 Oe
●残留磁束密度:1500ガウス
●角形比:0.87

<電磁変換特性>
●動作バイアス:108%
●感度 333Hz:+2.5dB
●周波数特性 8kHz:+3.0dB
●周波数特性 12.5kHz:+9.0dB
●感度むら:0.5dB
●最大出力 333Hz:+4.0dB
●SN比:59dB
●転写:55dB


【1977 tape sound誌のソニーDuadカセット評価記事】

※なお、Duadはカセットテープ部門で「77ベストバイ」に選ばれている。

 音を外側から掴み、スケール感たっぷりの音を聞かせるテープであり、とかく小型にまとまりやすいカセットの場合には独特なメリットを持つ。
 聴感上の帯域バランスは、やや低域にウェイトをおいた安定型のバランスであり、高域はゆるやかに下降しているように聞き取れる。
 これに対して、低域は量感がたっぷりとしており、充実しているが、やや音色は重く、反応はさして速くない。
 中低域は厚みがあり、中域はやや粒子が粗く、高域もさして変わらない。
 このテープは、スケールの大きな、構図のしっかりとした音と聞かせる特徴を持つが、安定型のバランスだけに反応が遅く、やや音の鮮度が不足気味である。
 デッキとの適応性は、一般的にテープ自体のキャラクターが強く感じられ、独特な音にまとめる傾向があり、この意味では、幅広いといえるかもしれない。
 このキャラクターが強く出るのは、おそらくこのテープのバイアスとイコライザーの組み合わせが、やや変わっているためかもしれない。
 そのためソニー以外のデッキでは、特徴が活かされず、反応が鈍く散漫な音になりやすいが、たとえばソニーTC-K7Bの場合には、カセットばなれのした厚みがあり、充実した粒だちの良い安定した音を聴かせる。
 録音レベルの変化には安定し、キャラクターは変化しない。
 しかし、レベルを低くとると反応が強くなり、ナチュラルさが出てくる。


【その他】

 筆者宅には拾ってきて再生したソニーCF-6500というステレオラジカセがある。
 メーカーがソニーなので、テープポジション切り替えは「NORMAL」と「Fe-Cr」の2ポジションである。
 筆者はDuadカセットも数本所有しているが、今となってはもったいないので、新品のまま封を開けずに封印している。

 ほとんどのテープデッキメーカーがType-3(Fe-Cr)ポジションを切り捨てていく中、ソニーだけはテープポジション検出孔のないテープ用に一時期、強制切替えボタンを装備したデッキを発売していた。
front panel
 写真はソニーTC-FX707Rのフロントパネル。
 わかりにくいが、テープセレクト表示の右側に「AUTO/III」(IIIはローマ数字の3)というボタンがある。
 これはType-3テープだけでなく、初期のType-4(メタル)テープにはメタル用の検出孔が無く、Type-2(クローム)用の検出孔しかなかったためである。


BASFのテープ】

BASF tape

 写真の3種類は82年stereo誌掲載の貴重なBASFのテープである。
 まずPRO2テープは、当時日本で唯一ピュアクロームを採用したテープである。
 C-60で\750もしていた。
 すでに公害問題で他のメーカーはコバルト磁性体に変わっており、それまでのテープポジション名である「クロームポジション」ですら 「ハイポジション」と呼ぶようにしてしまっていた。
 そんな中でかたくななまでにクローム磁性材にこだわっていたBASF
 同社の広告によると「スーパークローム磁性材が生み出す、ワイドなダイナミックレンジ」ということである。
 続いて、PRO3は珍しいType-3テープ。
 こちらはC-60で\800というお値段。
 フェリクロームポジションばかりでなく、ノーマルポジションでも高級テープによる大スケールで、質の良いサウンドを楽しめるそうである。
 最後はPRO4。
 これがメタル検出孔が空いていない珍しいType-4テープである。
 値段はC-60で\1150であった


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