ティアックカセットデッキの部屋

最終更新日1999年1月3日


【概要】

ティアックの半速モードカセットデッキとマルチトラックレコーダーです。

情報御提供はけんぱん様です。

TEAC

ティアック C-2X,C-3X

C−2X,9.5センチの倍速メカ、2モータークローズドループデュアルキャプスタン、3ヘッドシステム \165,000
C−3X,9.5センチの倍速メカ、2モーターテンションサーボ、3ヘッドシステム \119,000

C−2X,C−3Xに装備されている倍速は、他のカセットデッキやレコーダーと互換性がありません。
したがって個人が録音、再生して楽しむほかは標準速でご使用下さい。
技術の全ては「音質」に向けられた。
計測器の精度を備えた駆動メカニズム、特性の極限を狙った高品質アンプなど、音を精密に固定して精密に解き放つという録音機の使命をぎりぎりまで見つめたCシリーズ。
そのCシリーズに新たに"X"を加えた倍速メカC−2X,C−3X。
その冴えわたる倍速の音に初めて触れた人は、カセットの常識を超えた至高の表現力に深い感動を覚えるに違いない。(中略)
●テープ速度を倍速にするとテープ磁性体面への記録波長が2倍になるため、高音域の最大録音レベルが向上。
 従来のカセットデッキでは不可能とされていた高い周波数の信号も容易に記録できるので、ダイナミックレンジが大幅に拡大されます。
 また、再生時には高域補償量(再生時定数)が少なくなるため、総合的なSN比が改善されます。
 さらにメカニズムにおいてはフライホイールが高速運動するため回転エネルギーが増加し、ワウフラッター特性を向上。
 透明感あふれる、ダイナミックな再生音を実現しています。
●録音する刻々のスペクトラムに合わせて録音バイアス、録音イコライゼーションを連続的に変化させることで、テープのダイナミックレンジを最大限に引き出すドルビーHX(ヘッドルーム・エクステンション)システム。
 主にプログラムソースの高域成分の特性を改善させるこの新しいシステムは、低域成分に対しても最適な静止状態バイアスをかけることにより、変調ノイズやドロップアウト、ひずみ率などの改善にも効果を発揮します。
 なお、ドルビーHXシステムは、ドルビーシステムと併用するよう設計されており、ドルビーHXエンコードテープは他のドルビーシステム内蔵カセットデッキで完全に再生できます(後略)。
 ワウフラッター(WRMS):0.03%(9.5センチ),0.04%(4.8センチ)
 総合周波数特性(メタルテープ):20〜27,000Hz(9.5センチ), 20〜22,000Hz (4.8センチ)
 SN比:62dB(9.5センチ),60dB(4.8センチ)、以上C−2X(C−3Xは周波数特性の高域限界が2,000Hzずつ下回る)。
【けんぱん様の御意見】
高音質化のためならテープを倍速にしようという、発想もスタイルもTEACらしい両機。
1980年12月の総合カタログです。
C−3XがBIAS量や感度を手動調整できる1キャプスタン機なのに対し、デュアルキャプスタン機C−2Xは、上位モデルのC−1mk-2同様、テープ毎に用意された専用プラグインカードでチューニングを取るという、業務用機っぽい仕様です。
直後に登場する下位の2ヘッド機C−4にも倍速モードはありましたが、なぜか最上位のC−1mk-2は標準速のみでした。
このカタログにこそ堂々と倍速モードの装備を謳っていますが、その後の雑誌広告等では倍速モードの標記が消えてしまい、81年に登場の後継機C−3RXはdbxを内蔵するものの標準速のみに戻っていますので、やはり規格上の問題があったと想像されます。
「個人が録音・再生して楽しむほかは・・・」と断ってはみたものの、言い訳にはならなかったのでしょうか。
当時のCシリーズや後のZシリーズといったTEACの3ヘッド機は、低音域に「迫力がつく」ことを指摘する評価記事が散見されるのですが、同社のオープンデッキを聞き慣れた耳にはそれも気持ちよかったと思われます。
倍速モードでの音質については、当然ながら良い評判しか聞きませんでした。

カセットマルチトラックレコーダー


TEAC 144

プロ感覚にあふれたホットなレコーディングマシーン Sound Cookie 144 \175,000
/音の素材を思いのままに料理してオリジナルなサウンドを創造するマルチレコーディングの世界。
 Sound Cookie144は、カセット方式の4チャネル・マルチトラックレコーダー。
 多重録音からミックスダウンまで自由自在にコントロールできる機能と性能を、コンパクトなボディに集約した、プロ感覚あふれるサウンドマシンです。
●本格的な独立ミキサーとしても使える4入力2出力オーディオミキサー(中略)
●コンパクトなカセット方式
 9.5センチ速度の4チャネルレコーダー
 音質のよさに目をみはる9.5センチ速度、4トラック4チャネルの片道トラック構成、コバルト(クローム)テープ専用設計。
 ソフトタッチのフルロジックコントロールですばやく操作できる2モーター方式の本格的メカニズムです。
●楽器のピッチずれや特殊効果を狙うときに欠かせないピッチコントロール機能(録音・再生可能)
●カウンターメモリー機能
●ドルビーシステム(常時ON)。
/Sound Cookie144仕様(ミキサーセクション略)
 使用テープ:C-30〜C-90カセットテープ、コバルト(クローム)タイプ、TDK SA, MAXELL UD-XL・IIまたは相当品
●録音トラック:4トラック片道方向
●録音チャネル:2チャネル(切換式で4トラックに録音)
●テープ速度:9.5センチ±3%
●ピッチコントロール:±15%
●録音時間:15分(C-60テープ)
●ヘッド:消去4チャネル×1、録音/再生4チャネル×1
●モーター:キャプスタンFGサーボDCモーター×1、リールDCモーター×1
●ワウフラッター:0.04%(WRMS)
●早巻時間:90秒(C-60テープ)
●周波数特性:20〜18,000Hz
●SN比:63dB(聴感補正Dolby IN)
●クロストーク:50dB(1,000Hz)
●消去率:65dB(1,000Hz)
●28W, 460(幅)×120(高)×370(奥行)mm, 9kg

【けんぱん様の御意見】
CカセットのMTRはTEACの144が発端で、トラック数や倍速だけでなく、TYPE-2テープ専用という点でも規格から外れまくってます。
ところがこの方式は、144がそこそこ売れたために、後に発売された他社製品も続々と踏襲し、慣例化してしまったのでしょうか。
通常の速度で使えないようにしたことで、オーディオ機器ではなく、工業用データレコーダのような特殊機器だと言い訳できたのかもしれません(近年の多くのMTRは通常速度も可能)。
この会社は、最近のカタログでも、1978年の144が世界初のカセットMTRだと謳っております。
確かに1978年の時点でメタルテープに対応したデッキと言えば、まだラックス、東芝、ビクターだけでしたから、144のTYPE-2テープ専用という設定もそれほど不自然ではありません。
しかし、私の記憶が確かなら144の発売は1979年です。
各社のメタル対応デッキ発表の嵐の中で、不自然な気にさせられた記憶があるのです。
この画像をサンプルしたカタログの発行時期もそうですし、雑誌「サウンドレコパル」創刊第2号(昭和54年11,12月号。小学館)の新製品記事にも紹介されていましたから、79年が正解でしょう。
メタルテープが現在よりもずっと高価で、ようやく富士フィルムが90分テープの市販にこぎつけたのが79年の秋期でしたから、オープンリールMTRの廉価版として登場した倍速カセットMTRはメタルテープの対応を見送った、と考えられます。
まあ、1年ぐらいサバを読んでも、カセットMTR文化の創始者であるという栄光に変わりはありませんが。
今ではMDを使ったMTRが実質6万円超から買える一方、短時間のMTRとしては固体メモリやハードディスクを利用したレコーダのほうが高機能かつ低価格になっています。
もう新機種が出ないと思えるカセットMTRもオーディオ考古学の予備軍ですね。

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