マイクロカセット・メタルテープの部屋

最終更新日1998年5月24日


MICRO CASSETTE

【概要】

 マイクロカセットテープはオリンパスが開発したものである。
 コンパクトカセットテープがオーディオの主流になっていた頃、さらなる コンパクトさを狙って、マイクロカセットテープをハイファイ化しようとしていた 時期があった。
 しかし、しょせんはメモ録音用に設計されたマイクロカセットテープだっただけに ハイファイオーディオにはならなかった。

 当初はオリンパスのほかはデッキを作っていた松下とソニーだけにしか ライセンスしなかった。
 品質を安定させるための作戦だったらしいが、この徹底した作戦が逆に、 普及の妨げになったと思われる。

 一時期はオーディオ用途をもくろんで、写真のソニーも通常のローノイズタイプのほかにHFタイプも商品構成に加えていた。
 ただ私自身、マイクロカセットは留守番電話以外に使ったことがないので、どの程度の音質なのかは知らない。

 その後、サンヨーとビクターがステレオマイクロカセットデッキを発売したが、やはりオーディオ用にはならずに撤退した。

けんぱん様御提供松下製メタルテープ
National metal1
小さくても豊かな音の広がり、音楽録音ならメタルテープ

いつでもどこでもいい音で音楽を楽しむならメタルテープ。
お気に入りの音楽をFMエアチェック、小さなマイクロとは思えない豊かな臨場感をあなたの耳でお確かめください。
メタル・マイクロカセットテープ

National metal2
A:RT-46MMC \950
B:RT-46MMC-4(4巻パック) \3,800
(2.4cm/s 46分、1.2cm/s 92分)
C:RT-60MMC \1,150
(2.4cm/s 60分、1.2cm/s 120分)

マイクロカセットのミュージックテープ

music soft
けんぱん様のご意見
このカタログは昭和57年2月のものですが、マイクロカセットのメタルテープやミュージックテープも紹介されています。
「高田みづえ」や「太田裕美」には悪いのですが、テイチクとアポロンだけじゃ普及の難しいことが見え見えでした。

OTTO RD-X2 \65,800('82頃)
OTTO RD-X2

2モータードライブのステレオ式マイクロカセットデッキ、マイコンコントロールによる安定したフェザータッチの操作機構、ドルビーNR回路を採用し、メタルテープが使用できる小型、高性能マイクロデッキです。

早川様からのご意見
OTTOのRD−X2の写真がありましたが、後継機が出ていたのですね。
1号機(だと思います)はRD−XM1(今でも持ってます)で、発売は1979年だったと記憶しています。
型番が何故「X1」でなくて「XM1」かと言うと、携帯型 プレーヤーとしてRD−XP1と言う機種があったからです。
当時ソニーのウォークマンが出て話題になっていました。サンヨー としては小型化を狙ってメタルマイクロカセットを使ったヘッドフォン プレーヤー(スピーカーはついていません)RD−XP1を作り、 そのための録音用としてRD−XM1を作ったものと思われます。
確かにプレーヤーは当時のウォークマン1号機やその後継機(だと 思います。カセットケースサイズと宣伝していたが、使用する時には カセットケースより大きくなるやつ)、東芝のウォーキー(カセット より小さくて、テープがはみ出るやつ)などより遥かに小さく(当たり 前か)て、複数のテープを持ち歩いても邪魔にならない優れもの でした。
(当時はインナーイヤータイプがなくてヘッドフォンが かさばったのが難点ですが。)
但し、デッキタイプは、オーディオ機器としては、いくらメタル テープとはいえども、2.4cm/sのテープスピードによる高域の 貧弱さは補いようがなく、ノイズの多さともあいまって、専らXP1の ソース録音に使っていました。
今回、押し入れから取り出して動かして みたのですが、リール駆動部でスリップがあるようでうまく動きません。
点検してみて直れば、音に関する(現在の)レポートもお知らせできるの ですが。(プレーヤーは動きました。)
RD−XM1は機械としては凝っていて、メカはフルロジック(これも 懐かしい言葉ですね)コントロールで、上面パネルに系統図が書いて あります。
大きさの割にずっしりと重く、電源トランスも大きいです。
もしご希望であれば、写真や取扱説明書の内容を提供することも出来ます ので、お知らせ下さい。
それに確か当時は、マイクロカセット用のカーステレオも出たような 気がします(松下だったかな?)。


【新聞記事】

オリンパス、パソコン用にマイクロカセットテープ製造特許を有償公開 まずTDK

83年3月26日 日経産業新聞

 オリンパス光学工業はマイクロカセットテープの製造特許を有償で公開することを決めた。
 これまで同社は製品の互換性を維持することを理由に特許開放には慎重な立場をとってきたが、他社の生産技術が向上したうえ、パーソナルコンピュータのデジタルデータ記録用などにマイクロカセットテープが大量に利用される見通しとなったことから、普及促進のために公開に踏み切った。
 このほど磁気テープ首位のTDKが同社とライセンス契約を結んだほか、日立マクセルも特許を導入し自社生産を始める方針。
 今後契約メーカーは更に増える見込みで、マイクロカセットテープの生産は新たな時代を迎えることになる。
 マイクロカセットテープは昭和44年にオリンパスが開発した超小型のカセットテープで、主にメモ録音用に利用されている。
 音楽録音用に広く普及しているコンパクトカセットテープに比べ大きさは四分の一とあって、大量生産にはより高水準の生産技術が要求されるため、同社は粗悪品が流通するのを防ぐために特許を非公開としていた。
 ただ、一社だけでは普及が阻害されるので、昭和50年代になってからは優秀な生産技術を持つ松下電器産業とソニーの二社に限り、特許を無償で供与する戦略をとった。
 その他のメーカーはこれら三社のいずれかに生産を委託せざるをえず、TDK、マクセルなどの大手はかねて特許の公開を要求していたもの。
 ここへきてオリンパスが公開を決めたのは他社の技術水準が向上し複数メーカーで生産しても製品の互換性が保てると判断したため。
 また、パソコンのプログラムなどを記録するためにマイクロカセットテープが使われはじめ、需要が急拡大しそうなことからメーカー数を増やした方が有利と見たのも一つの理由である。
 同社によると録音機としてのマイクロカセットレコーダーの国内需要は年間百万台程度だが、最近はパソコンのデータ記録用として一ロット百万台規模を受注するケースも出てきたほどだという。
 先頭を切って契約したTDKは千曲川工場(長野県)内にすでに試作ラインを有しており、マクセルも生産開始時期は未定としながらも特許契約を結ぶ交渉を進めている。
 このほか内外メーカー数社から特許導入の申し入れがあり、今後自社生産に切り替えるメーカーが増えるのは確実。
 これによりマイクロカセットテープのコスト低減・性能競争などが活発化しそうだ。
 新たに契約を結ぶメーカーは特許料をオリンパスに支払うことになるが、松下、ソニーについては過去のいきさつから無償での特許使用が認められる公算が大きい。


オリンパス、マイクロカセット特許公開−情報機器向けに”第二の人生”

 83年4月4日 日経産業新聞

 オリンパス光学工業が保有していたマイクロカセットテープの製造特許が有償で公開された。
 商品化から十三年を経た今になって公開を決めたオリンパスの判断を「遅きに失した」と見るか、逆にその慎重さを評価するか、見かたの分かれるところだ。
 その評価はともかく特許公開でマイクロカセットが新時代を迎えることだけは間違いないようだ。
 コンパクトカセットとは対照的に地味な存在として地道に需要を開拓してきたマイクロカセット−−特許公開にいたるいきさつや公開後の行方を探ってみた。

 ■「コンパクト」の陰で

 問題の特許はカセットハーフ(テープを収めるケース)の製造からその意匠権にわたる広範なものだ。
 特許導入無しにはたとえ磁気テープ技術を持つメーカーでもマイクロカセットに組み上げることができないばかりか、独自のデザインを施すことも制限されている。
 そのマイクロカセットがオリンパスによって開発された(テープ自体についてはTDKが協力)のは昭和44年、その翌年に商品化されている。
 フィリップスによって昭和38年に開発されたコンパクトカセットが音楽録音用などに普及期を迎えたころである。
 マイクロの方はメモ録音用としてスタートを切った。
 フィリップスはカセットレコーダーの「普及促進と規格乱立防止」のため、コンパクトカセットの特許を無償で開放するという「英断」を下した。
 標準化契約を結べば、どのメーカーもコンパクトカセットおよびレコーダーの生産が自由にできるわけで、今日、コンパクトカセットが世界中に普及しているのはこの英断によるところが大きい。
 しかしオリンパスはこれとまったく別の道を選んだ。
 マイクロカセットはサイズが小さいだけに高い精度が必要で「安易に特許を公開すると粗悪テープが流通する心配がある」というのが最大の理由だった。
 こうした建前に加えて「あわよくば特許を独占したい」という考えも公開を慎重にさせた理由のようだ。

 ■すったもんだの13年

 しかしオリンパスの”特許独占”が13年続いた裏で、オリンパスと他のメーカーの間に特許を巡る攻防がなかったわけではない。
 その最大のものは、オリンパスの特許非公開に業を煮やした松下電器産業とソニーがそれぞれ独自のマイクロカセットを開発、発表寸前に至った事件である。
 昭和40年代後半のことで、その時は磁気テープ工業会が三社間の仲介の労をとり、規格乱立を避けた。
 具体的にはオリンパスと松下、ソニーの間で特許交換契約が結ばれ、オリンパス方式以外は商品化しないという”紳士協定”のもとに、松下とソニーはマイクロカセットテープを自社生産する権利を得たのである。
 しかし、オリンパスは松下、ソニーと”妥協”したものの、その後も他メーカーへの特許公開には頑として応じないまま今日に至っている。
 他のテープ、家電メーカーが自社ブランドのマイクロカセットテープを販売しているにもかかわらず、生産をこの三社に委託せざるを得ないのはそのためである。
 もうひとつの事件は、当時フィリップスも独自のマイクロカセットを開発、「マイクロはコンパクトの小型版にすぎない」として日本のメーカーに対し基本的な特許権を主張してきたこと。
 コンパクトの特許権を開放したのはよいが、テープもレコーダーも市場を日本メーカーに食い荒らされることになった同社は、マイクロについては特許料を要求しようとしたわけだ。
 日本側は「マイクロをコンパクトの小型版とするならば、コンパクトの標準化に応じているメーカーからマイクロだけについて特許料を要求するのは不合理」と突っぱね、最終的にはフィリップスが折れた格好になっている。
 しかし業界筋によると、形式上はオリンパスとフィリップスの間でも特許交換契約が結ばれているという。
 それがここへきて有償ながらも公開を決めたのは、パーソナルコンピュータのデジタルデータ記録用にマイクロカセットの新しい需要分野が開ける見通しとなり、「特許公開は今が潮時」とみたためだ。
 消去・録音を繰り返して使えるメモ用と異なり、データ保存用に使われることになればテープの消費量はぐっと増大する。
 こうした新しい需要分野向けの普及促進を図らなければせっかくの”芽”を自ら摘むことになる上、テープメーカーの自社生産意欲をそぎ、入るはずの特許料も入らなくなりかねない。
 そうした思惑がオリンパス側に生じたと見る向きが多い。

 ■生産急増は期待薄

 今のところ特許公開に対応して自社生産に乗り気なのはTDK、マクセルなどで、他に内外数社からライセンス供与の申し入れがあるという。
 もっともコンパクトカセットに大差をつけられているだけに、特許公開で生産が急拡大するとみている社は少ない。
 テープ大手の中では富士写真フィルムが「当面模様眺め」の構えだ。
 音楽録音用としては市民権を得られなかったマイクロカセットだけに、今後の可能性は情報機器向けにかかっているが、ここでもコンパクトカセット、フロッピーディスクなどのライバルが存在する。
 自社生産メーカーが増えて性能と価格両面の競争が刺激されることで、どれだけ新分野に食い込めるかが焦点だ。
 商品としてさらに大きく成長できるかどうか。
 マイクロカセットはここで新たなスタートラインに立ったといえるかもしれない。


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