W-VHSの部屋

最終更新日1999年06月23日

参考文献・新ビデオ技術ハンドブック(電波新聞社刊)


【概要】

 一部の熱狂的なファンがいるものの、一般的にはメジャーになることは無く消えそうなハイビジョン。
 W-VHSは民生用途で唯一ハイビジョンテレビ放送を録再できる規格として登場した。
 しかし、アナログハイビジョン放送と運命を共にしそうである。
 ホーマーさんの掲示板を見る限りではずいぶん人気は高そうなのであるが.....

 1993年1月8日、日本ビクターはW-VHSの技術発表を行った。
 それから約1年後の同年12月1日、HR-W1を1993年内に発売することを発表した。
 だから本当に市場に出回ったのかはいつなのか不明である。
 特長はハイビジョンのベースバンド信号が録画再生できること。
 世界初のハイビジョン対応VTRの誕生である。
 ベースバンドなのでよけいな圧縮などをしておらず、高画質と言われていた。
 テープには専用のメタルテープを使用していた。
 このテープを用いて3時間のハイビジョンの録再を行うHDモード。
 それから同じくW-VHSメタルテープを用いて現行NTSC信号を9時間録再できるSDモードを備えている。
 対応テープはW-VHS専用テープに限られる。
 9時間録再可能なWT-180HAの価格は5,900円、WT-120HAは4,900円である。

【W-VHSの革新的な点】

(1)4ヘッドヘリカルスキャン記録が標準
輝度信号ばかりでなく、色信号もFM記録するようになった。
(2)多彩な映像信号に対応
ハイビジョンやEDTVにも1台で対応している。

【要素技術】

モードのあれこれ
(1)HD(High Definition)モード
ハイビジョンベースバンド信号の録再が可能
(2)SD(Standard Definition)モード
NTSC信号を時分割方式でまるごとFM記録
(3)SD2(Standard Definition 2)モード
SDモードと同様の方式で2チャンネル分の映像を記録できる

W-VHSのここがすごい
(1)2トラックパラレル記録
ヘリカルスキャンで2トラックを同時に録再する。
元の信号を2チャンネルに分けて扱うので走査線の偶数・奇数番目のグループで分けている。
(2)TCI記録方式
Time Compressed Integration記録とは輝度信号と色信号とをそれぞれ時間軸方向に圧縮して時分割に交互に伝送する方式である。
これにより輝度信号と色信号相互間の干渉の問題が解消され、また、色信号も輝度信号同様にFM記録できるようになった。
それまでの家庭用ビデオフォーマットでは色信号を低域変換して記録していたため帯域が狭く、ノイズにも弱かった。
色信号のFM記録が実現したことにより複雑なノイズリダクション機能や色にじみ補正技術が不要になった。
このためオリジナルの絵を忠実に録再できるようになったと言われている。
(3)3次元エンファシス
色信号をFM変調記録するため、従来のノイズリダクションではなく、ビデオエンファシスと呼ばれる手法を取る。
詳しくはビデオの解説書を見てみよう。
(4)デジタルタイムベースコレクタ
2チャンネルで分割記録しているため、タイムベースコレクタは必須の機能である。
(5)高性能メタルパウダーテープ
専用の記録テープはメタルテープを使用。
ただし、蒸着タイプではなく塗布型を採用。

 HDモードSDモードSD2モード
テープ速度(mm/sec)33.3511.1233.35
テープ・ヘッド相対速度(m/sec)5.8
トラックピッチ(マイクロメートル)581958
記録時間180分540分180分
入出力信号ハイビジョンベースバンド信号
(Y,PB,PR)
NTSC信号または
これに準拠したYCセパレート信号または
(Y,R-Y,B-Y)
映像信号処理方式TCI信号2トラックFM記録
(1032ライン/フレーム)
TCI信号FM記録
エンファシステンポラルエンファシス
垂直エンファシス
メインエンファシス
サブエンファシス
ホワイトクリップレベル240%
ダーククリップレベル110%
水平画面取り込み率約85%
垂直画面取り込み率約84%
TCI圧縮率(輝度信号)1/0.571/1.2
TCI圧縮率(色差信号)1/1.7(線順次)1/7.2
ホワイトピークFM周波数10.5MHz
シンクチップFM周波数8.0MHz
デビエーション2.5MHz
ビデオヘッドアジマス角±15度
音声記録方式独立トラックFM記録深層FM記録独立トラックFM記録
音声信号方式VHS FMオーディオ方式に準拠
PCM方式はオプション PCM方式はオプション

HR-W1 VICTOR HR-W1 \620,000(93/12)
ビクターのW-VHSビデオ1号機。

HR-20000 おまけ・VICTOR HR-20000 \400,000(93/12)
W-VHSビデオの元になったらしいHR-20000。
40万円という価格は民生用途としては超高級機。
編集目的とした人には朗報である。


SR-W310 VICTOR SR-W310 \620,000(94/04)
ビクターの業務用W-VHSビデオ1号機。
とはいっても民生用のHR-W1そのまんまだと思います。

SR-W310 同じくビクターの業務用W-VHSビデオ1号機SR-W310の裏面。
SR-W310のカタログにはなぜか民生用HR-W1カタログに無かった表面シーリングパネルを開いた画像や裏面の画像が載っていた。
入出力端子も民生用途のピン端子のみ。
せめて映像はBNC端子くらいは使って欲しかった。


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