4チャンネルの部屋

最終更新日2001年10月25日

資料御提供は東京在住の山口様です。
参照資料:季刊ステレオサウンド’71 別冊4チャンネルのすべて


【概要】

 現在、普通にステレオ再生とは前方に配置した左右のスピーカーのみで再生する。
 左チャンネルと右チャンネルとで異なる2つの音が同じ再生されるので、これを2チャンネル再生(以下2ch)という。
 「4チャンネル(以下4ch)」とはさらに後方にも2個のスピーカーを置いて立体音響再生を目指したものである。

 現在ではスピーカー配置はフロントばかりでなくリヤにもスピーカーを置くことは珍しいものではないが、かつて各メーカーごとにバラバラの規格で4ch再生を競った時期があった。
 各社、統一方式ではなくそれぞれの思惑で勝手な規格でバラバラにやっていた。
 おかげでユーザー側は大迷惑。
 全メーカーでフィールドテストをしていたようなものである。
 当然この4ch、あっというまに尻すぼみになって消えた。
 ここでは当時のメーカー広告を中心に紹介する。

 録音と伝送と再生とをそれぞれ何チャンネルで行うかで以下のような表記を行う。
 4ch録音で、4ch伝送、4ch再生を行う方式を4-4-4方式。
 4ch録音、2ch伝送、4ch再生を4-2-4と記述することにする。


4chステレオの区分

4ch 4ch

4ch

【4ch-disc】

ディスクリート(4-4-4)方式
・プログラムソース
 日本ビクター
・再生機
 日本ビクター CD-4方式

マトリクス(4-2-4)方式
・プログラムソース
 エレクトロボイス、CBSコロムビア、CBSソニー、トリオ、東芝、日本コロムビア
・再生機
 エレクトロボイス
 日本ビクター(Sound Field Composer)
 ナショナル(AFD)
 サンヨー(クォードライザー)
 オンキョー(Sound Composer)
 パイオニア(クォドラライザー)
 サンスイ(クォードフォニックシンセサイザー)
 ソニー(SQ方式)
 トリオ(クォードリックス)
 東芝(QM方式)
 日本コロムビア(QX方式)

【4ch-tape】

オープンリール(ディスクリート)4-4-4
・プログラムソース
 日本ビクター、日本コロムビア、キング、CBSソニー、トリオ、ヴァンガード
・再生機
 日本ビクター、日本コロムビア、パイオニア、ソニー、サンヨー、ティアック、ナショナル、オンキョー、アカイ

8トラック(ディスクリート)4-4-4

・プログラムソース
 アポロン、ポニー、日本ビクター、RCAビクター
・再生機
 パイオニア、オンキョー、日本ビクター、アカイ


【広告に見る各社の言い分】

ビクター編

4chは、ただ音が良いというだけではありません。

4chを大別すると、ディスクリート、マトリックス、そしてスピーカーマトリックスの3種類に別けられます。
この中でもビクターが開発したディスクリートの良さ、素晴らしさは、いろいろなオーディオ誌で紹介され、もう皆様もご存知ですね。
ビクターとしては、もっとも理想的な4chシステムである、このディスクリートを4chの本命としています。
また、ディスクリートを4chの標準にしようという動きが、各方面から起こっていることも事実です。
ディスクリートは、ただ単に2chより原音に近い音場再現ができる、というだけではありません。
新しい音楽芸術を生み出す可能性もあります。
4つのスピーカーで聴くディスクリートは、アーティストの中に入って聴くのと同じ効果も再現できることから、アーティストの前で聴くこれまでの音楽ではなく、アーティストの中に飛び込んで聴く、新しい形の音楽が誕生することも十分考えられるわけです。
しかし、4chがいくらすばらしいといっても「4chはどうも....」という2chファンの方がいる、ということもビクターは忘れていません。
ビクターは、これをもう一歩進め、2chと4chの両方が楽しめ、さらに2chソースでも4chと同じ臨場感が楽しめるSFCS(音場創成装置)を開発。
この装置を4chアンプに内蔵しました。
ビクターの4chは、4chソースも2chソースも、そしてディスクリート、マトリックス、スピーカーマトリックス、すべてが楽しめる世界でも類の無いオールマイティシステムです。

コロムビア編

心できく4チャンネルニューステレオ

4chステレオ、最初は耳新しかったこの響きも、各種の方式が提唱されていますが、コストパフォーマンス、コンパチビリティ、テクニカルエンジニアリング、そしてミュージックソースの供給などの諸問題から、マトリックス方式が内外ともに定着しつつあります。
4chステレオは適当の残響音を生かすことによってホールの雰囲気と感動を盛り上げる「臨場感の再現」と楽器の音像を明確に捕らえる「定位間の再現」を実感的に捕らえることができます。
さらに音響心理学、音響生理学などの参加によって総合的に4chステレオの諸テーマが帰納されるといえましょう。

パイオニア編

理論・効果・音質の調和から甦る音場

パイオニアの4チャンネルに関する流れの実際を考えてみますと、その歴史は深く既に多チャンネル方式の実験でさまざまな結果をみてまいりました。
その代表的なものがM.M.O.(ミュージック・マイナス・ワン)。
8チャンネルの音源の一つをナマに置き換え、その効果には絶賛をいただいてまいりました。
そして前後2-2方式が実用化した現在、パイオニア製品には過去の実績がフルに生かされ、もっともパーフェクトな製品化が実現しております。
まずもっともオーソドックスなオープンリールタイプのデッキ開発から始めました。
1チャンネルにつき、1トラックを専用につかえることから、テープによる4チャンネルは完全かつ信頼のおけるもので、オープンリールについでカセットタイプ、カートリッジタイプと試作を重ねてまいりました。
そしてまず商品化したのが4チャンネルカーステレオです。
これはソースの普及と方式の決定の早かったことが幸いしたためで、ついでオープンリール、カートリッジタイプのデッキが発売されます。

このようにテープ関係からスタートした試作の流れは、ついでFM放送による実験を試み、さらにディスクの変調方式4チャンネル、2チャンネルソースの4チャンネル化、マトリックス方式ディスクによる4チャンネル再生と、ますます多彩化した試作実験を重ねてまいりました。
このような試作と実験の試みは、昨年のオーディオフェアで公開し、マニアの方々からさまざまな御意見を頂きました。
その結果、今年の4月その第一弾としてプリ、プリメイン、パワーアンプを発売、次いで総合型、クオドラライザーアンプ、セパレートステレオと発売することにしました。
すでにFM放送による実験も実際の番組を使って試みられ、今年はソースの充実とともにますます発展の一途をたどるものと思われます。

今後ともパイオニアの先行する姿勢とユニークな製品開発に御期待ください。

サンスイ編

SANSUI

4チャンネルステレオのリードオフマン、サンスイ。

昨年の6月、当社がQS方式の開発に成功したときには、国内外共に4チャンネルの話題は少なく、静観ムードが業界にも、市場にもただよっていたようです。
ところがどうでしょう。
当社の予言どおり、わずか1年足らずのうちに、マトリックス方式の4チャンネル製品が爆発的に市場を満たす気運となってきました。
これはとりもなおさず、4チャンネルが単にチャンネル数の増加を意味するだけでなく、音の空間合成の作用により極めて生に近い音場創成が可能であるという点に、おそまきながら各社が注目したからに相違ありません。
そして今年の3月、福岡で開催された第4回九州オーディオフェアでは、サンスイに引き続き、各社から競ってマトリックス方式の4チャンネル製品が発表されたのです。

4チャンネルシステムの主流はマトリックス方式?

ディスクリート方式とマトリックス方式のいずれが今後の4チャンネルシステムの主流になるか一般ユーザーにとっては気がかりなことでしょう。
しかし、それもどうやら世界の趨勢はマトリックス方式に固まってきたとみてよさそうです。
アメリカにおいても、現在商品化されているエレクトロボイス社、ダイナコ社、CBSコロムビア社、あるいはシェイバー社のどの方式にしても全部マトリックス方式です。
今までの日本国内の報道によると、マトリックス方式は擬似の範囲を出ない、まがいものであるというようなニュアンスが強いようですが、これに関してはいろいろ誤解もあるようです。

オンキョー編

私たちの4ch哲学

百花奸を競う4chエイジ。
意はそそられ気もそぞろといった情況に追い込まれながら、さりとて、いずれを選ぼうにも疑問や理解できない点が多く、又、何かトリックめいた曖昧ささえ感じられたりしてなかなか踏み切れぬのが4chでもあります。
そこで、本誌の4ch特集にちなんで、いささか4ch機器のチェックポイントなど披露いたしましょう。
花のような、などとたとえられる豊麗なレディがこぼれんばかりの笑みをたたえていたりしたらその華やいだ雰囲気にすっかり目を奪われて、優しい気立てや並々ならぬ教養といった内面の良さに気づかずじまいだったとしても無理からぬ事です。
4chにして初めて可能になるなんとも華やいだ臨場感やなんともスケールのおおきなプレゼンスに酔いしれたとしても、実に無理からぬところです。
しかし!4chのメリットを音の(広がり)でしか捉えていないとしたら、それは間違いなく4chの良さを半分しか見ていないことになります(内面の良さを見落としていることになります!)。
十分に考慮されて作られた高度な4chでは、圧倒的に向上する音の広がりにともなって、ちょうどスピーカーの指向特性を良くした場合とまったく同じように、音が実にやわらかく豊かで自然なものになり、音像の解像力も増して音のクォリティのたいへんな向上がもたらされます。
これは、あくまで検討され尽くした4chでの話で、音の広がりに甘えて音質への配慮を欠いた4chでは、むしろ、2chで達成したクォリティのレベルから著しく後退することもありえます。
4ch機器の選択にあたっては、そこに組み込まれているプリアンプやメインアンプはもとより、マトリクス回路などまで歪率0.1%以下といった高いクォリティが確保されているか否か厳密にチェックする必要があります。
そうしないと、見かけだけのレディならぬ4chをつかまされることになり、装置全体のクォリティを大幅に損じてしまうことになります!
さて、プログラムソースの作成にあたっては、4chどころではなく、それこそマルチチャンネルで録音し、それをミキシングして仕上げますが、4chソースとしては、マルチで録音したものを、ミキシングで4信号にまとめてそのまま再生するディスクリート方式のものと、いったん2信号にまとめたものをデコーダーを通して4chとして再生するマトリックス方式のものとがあります。
従って、4ch機器は、この二つの4chをスムーズにこなす能力が要求されますが、ディスクリート4chに対しては、ソース側で4つに分離され、メインに投入できる状態までイコライズされアンプされるので、セレクターと入力端子を揃えていればよく、結局、4ch機器の優劣は、マトリックス4ch方式のコンポーザーの出来いかんで決することになります。
卓越したマトリックスを持つものが4chを制すことになります。
さて、4つの音源を持つ4chによって可能になる音場は、フロントに各音像をはっきり定位させ、リアからはホールトーンを再生するという伝統的なステージ音楽の音場を再現するという正当的なものと、ダイナミックに四方から音にサラウンドされるというニューロックやゴーゴーあるいは4音源を前提にして作曲される新しい音楽の音場を創造する前衛的なものとの2つに分類することができます。
従って、本格的な4ch機器は、この2つの可能性のそれぞれ理想的な効果を発揮する2つのマトリックス回路を持つことが絶対の条件です。
いずれか一方のマトリックス、あるいは平均的なマトリックスで2つの可能性を満たすことは原理的に不可能です。
下駄だけで和服も洋服も平気だというセンスなら話は別ですが。
最後にマトリックス4chでは、前方に定位していたピアノがある音域でふと頭上に移動したり、時には音像がぼけて行方不明になったりする放浪癖は、決してマトリックス方式の本質的欠点ではなく、出来の悪い気紛れマトリックスだけの問題です。
つまり、この放浪癖は、逆相成分の入った信号をマトリックスで扱う場合に発生するスピーカー間での位相のずれをコントロールできない技術的破綻が原因になっています。
この位相のずれは90度以上のときは著しく音質劣化として感じられ、75度以内ならほとんど感じられないという実験データが出ています。
従って、4ch機器は、どのチャンネル間でも、そしてどの周波数に対しても特に1kHz以下の波長の長い周波数で、位相差を十分小さく保つ完璧な位相シフタが不可欠の条件です。
マトリックス方式は育て方さえ間違えなければ、本来素直で厳格で、決して無軌道に走ったりするものではありません。
高いクォリティ、2系統の卓越したマトリクス回路、完璧な位相シフタを備える、考え尽くされた4ch機器には、輝かしく限りない可能性が与えられています。
新製品インテグラ1631はその好個のサンプルです。

日立編

極めて周到に多ch音場効果の実験を積み重ねました。

たちまちのようにオーディオ界を包んでしまった4ch台風をよそに、日立のLo-D開発チームは地味な基礎研究に心血を注いできました。
流行のバスに乗り込むのはやさしいことでした。
しかし、確たる先の見通しも無いまま流行を追うことは、流行を追うだけで精いっぱいという結果に終わりがちです。
流行の先に何があるか見失ってしまい、次に考えを進められなくなってしまうのです。
Lo-D開発チームには、あの名器と呼ばれるHS-500を完成した自信がありました。
慌てず、恐れず研究が積み重ねられました。
混乱を極めた4ch論争が、音場に関する基礎研究もデータも無く繰り広げられている状態に、日立は我慢できませんでした。
回り道かもしれませんが、頑固ものぞろいのLo-Dスタッフは、あえて基礎的な音場実験に取り組みました。

ESP手法と同じ多元尺土構成法で分析

1970年8月、武蔵野音楽大学ベートーベン・ホールには、異様な熱気があふれていました。
日ごろは壮厳なる雰囲気を漂わせているホール内には、ものものしい録音機器などが所せましと並べられ、マイクロホン群が林立しました。
いよいよ多ch音場実験のための8ch録音が始まったのです。
観客席の一部をそのまま再生時のリスニングルームに想定したマイク配置で録音、再生はマイクと同位置にスピーカーを設置した無響室で行われました。
再生音の評価は、物理的特性に心理的な「感覚」を加味した独特の尺度を用いました。
(この実験で最も良い結果のスピーカー配置が判明したらしいが図がないと説明できないので省略する)

4chステレオの目的はアンビエンス効果に他ならない

音楽再生に欠くことのできない3要素は、(1)プレゼンス(2)ローカリゼイション(3)アンビエンスであることはどなたもご存知のはず。
1と2については、長い間2chステレオで研究開発されてきた問題です。
急激に4chステレオがクローズアップされてきた理由は、3のアンビエンスにあります。
これについては世界的に著名なイリノイ大学のクーパー博士の実験でも確認されています。
つまり4chステレオのメリットには雰囲気を生み出すサラウンド効果=アンビエンスの醸成が第一といえるわけです。
そのためには、あくまで適正なスピーカー配置が大切であることは言うまでもありません。
日立が2年も前に発表したアンビオフォニックスピーカーは、このような音場理論によっているものなのです。
4chがブームになる前から、一部のマニア・評論家から高く評価されていたのも無理からぬ事でしょう。

日立の4チャンネルはいま、ゆるやかに歩み始めた

日立の音響開発スタッフが行った実験はこれだけではありません。
膨大な量のデータが蓄積されました。
そして今、確実な足取りで独自の4ch化を進めつつあります。
日立の姿勢はこうです。
決して実験的な製品を商品にしないこと。
近い将来にはディスクリート4chも一層の充実を遂げることでしょう。
今はまだ不統一な4ch製品の、互換性を前提にした規格の統一も行われることでしょう。
いま試験的な製品を商品化して、近い将来、使えなくなるといった方法は、マニアをモルモット化するやり方です。
いつどんな方向に4chが発展しようとも、日立の製品なら安心だとの方向で目下4ch製品開発を進めているのです。
どのようなマニアの要請にもこたえることは困難なことです。
しかし、ウルトラ頑固な日立の技術社魂が、安易な商品作りを許さないのです。

トリオ編

4チャンネル方式と2チャンネル方式

将来の家庭用音楽再生装置は4チャンネル→8チャンネルと、次第にマルチ音源へ移行していくであろうという説があります。
しかし私共は必ずしもそうは思いません。
結論から先に申し上げれば、2チャンネルと4チャンネル方式は共存すると考えています。
その理由は音源的理由、技術的理由、経済的理由の3つです。
(1)音源的理由
4チャンネルを楽しむには、よい4チャンネルのプログラムソースが必要ですが、これが現在の2チャンネルと同じように普及するにはかなりの時間がかかります。
このため現在の2チャンネルレコードを、そのまま4チャンネル化して楽しめるマトリックスデコーダーが、各社から発売されています。
また特殊な4チャンネル専用レコードも開発されつつあります。
同じくテープレコーダーも発売されています。
しかし、4チャンネル再生を考慮して録音されたソースが市場の大半を占有するには、まだ多くの時間を要します。
したがって当分の間は、2チャンネルソースの中から効果のあるものを選んで4チャンネル化したり、新しく発売される専用4チャンネルソースを買い集めながら、現在の2チャンネル再生を楽しんだり、4チャンネルを楽しんだりして両立させていくことになると思います。
とくに過去に発売され、再演不可能な数々の名演奏レコードは、2チャンネルとして永久に生命を持ち続けることでしょう。
一方4チャンネルのために作曲される音楽も生まれてくるでしょうし、既に発売されている2チャンネルレコードでも、すばらしい4チャンネル効果を発揮するものも少なくありません。
このようにソースの面から4チャンネルと2チャンネルは共存すると思います。
(2)技術的理由
FM放送を受信していると、モノの番組とステレオの番組が自動的に切り替わっていますが私たちはあまり強く意識しないで両者を楽しんでいます。
モノとステレオの両方を送っているものは、ソースの内容によって放送局が選択しているのです。
これとまったく同じ理由で将来はモノ、2チャンネル、4チャンネルが自動切換えになり、3方式が自由に放送され、受信機も、モノにも2チャンネルにも4チャンネルにも使用できるような、共用方式になることでしょう。
したがって再生装置は、モノ(ラジオなど)、2チャンネル方式、4チャンネル方式などを自由に選んで使用できます。
しかし、4チャンネルにしておけばすべての方式に適応できるので、予算があり、スペースがあればこれからは4チャンネルを考慮した方が良いと思います。
この場合、お手持ちの装置はそのまま生かし、新しく追加していくこともできます。
レコードやテープについて考えますと、マトリックス方式が普及すれば、現在のプレーヤーやテープデッキがそのまま4チャンネルに使用できますから、過去のコレクションを4チャンネル化したり、2チャンネルで聴いたりして自由に楽しむことになるでしょう。
2チャンネル方式は、音楽観賞用再生装置として極めて完成度の高いシステムですから、4チャンネル不要論を唱える人も多いと思います。
これももっともなことで、4チャンネルを順High Fidelityという立場から、納得のいくシステムに完成させるには、室内音響効果、スピーカー相互の位相干渉、ソースにまで戻って、難しい問題を多く抱えています。
このように純技術的追求を考えますと、4チャンネルは手も足もでないかもしれませんが、ある程度未完成の中からスタートして次第に経験を重ね、完成させてきた音響技術の歴史を考えますと、4チャンネルも今から歩き出してよいときではないかと思います。
(3)経済的理由
4畳半ないし6畳が大半を占める日本の住宅事情の中で、4つのスピーカーを備えた4チャンネル方式をどう処理するかはメーカーとして十分に考えなければならないと思います。
理想的には同じ型のスピーカー4本、同じアンプ4台がよいのですが、スペースと経済性から困難な場合が多いと思います。
したがって同型音色の小型スピーカーを後部の壁掛けに使ったり、柱状スピーカーをコーナーに置くなど、スペース的な考慮が必要です。
また、後部音響用としてアンプやスピーカーに費用を等分しますと、トータル価格が大きく跳ねあがります。
価格を大幅に上げずによい4チャンネルシステムを作り出すためにメーカーは苦心します。
セパレート型ステレオは各社競って工夫を凝らし、安価で効果的なものを研究していますが、前面音だけで音楽を鳴らして、従来と同等あるいはそれ以上の音を出すものを選ぶべきで、4つに費用を分配して、一つ一つが貧しくなったのでは、4チャンネルの意味はありません。
したがって4チャンネル方式には、多少の費用増加は覚悟した方がよいと思います。
費用に限定がある場合は、現在でも十分楽しめる2チャンネルからスタートしても悔いることはないでしょう。

オットー(三洋)編

正統的な、音楽的な4chへのお誘い。
4ch分裂症に、お遊びにさようなら

4つのスピーカーの間を、音が、ダブルスのピンポンのように行ったり来たりする不自然な音場創成が目的だとしたら、4chの可能性なんて実にさびしいものです。
大方の擬似4ch方式では、4つのスピーカーへの音の分配がテーマですが、私たちのクォードライザーではこれとは根本的に行き方の違う唯一のものであり、むしろ音の分配の拒否がテーマのようなものです。
私たちのクォードライザーは、フロントスピーカーの音をいささかも細工しません。
当然といえば当然ですが、フロントとリアのセパレーションを良くするため、フロントの音をいじり、勝手に再配分してしまう方式も少なくありません。
正に、角を矯めて牛を殺す!です。
こうしたやり方は、メインになるステージの音の分離を悪くし音質を損なってしまうだけでなく、何よりも、演奏家や録音ディレクターの意図を不遠慮に模様替えし、踏みにじってしまうことになります。
フロントの音をストレートに大事に大事に再生すること、これは、心ある擬似4chなら最初に守るべき基本的なルールです。
そして私たちのクォードライザー、現実の音楽会とまったく相似に、リアスピーカーからは、間接音=ホールトーンのみを、定位なき広がりを持って豊かに放射します。
言葉で言えば簡単な定位なき広がりですが、技術的には、定位させまいとすると広がりを失い、広がりを持たそうとすると定位してしまいます。
このジレンマを鮮やかに解決するのが、自慢のBSE回路です。
2chソースからマトリックス回路によってL−Rを作って間接音成分を多量に含むモノラル信号を取り出し(ここまではどの方式でも大同小異です。)、これを、特許出願中のBSE回路によって、4つのバンドパスフィルターを通して4つの周波数帯域に分割し、それぞれダイナミックな位相処理をした上でミキシングし、リアのLとRに振り分けてやります。
この方式は、モノラルのステレオ化の理想的方式として、1954年、デンマーク国立放送局のLauridsen氏によって発見され、1957年、ベル研究所のM.R.Schroeder氏によって精密に確認されたもので、今や「単一信号から驚くべきステレオ効果を得る方法」として世界の標準の地位を獲得しようとしている方式です。
しかも、このBSE回路による帯域分割のクロスオーバー周波数は、現実の演奏会場の音響特性を数多く分析し、音楽家の試聴がベストと認めるモデルパターンを作って、これに合わせて決定しています。
それゆえ私たちのクォードライザーは、2chソースに録音ディレクターの意図によってたっぷり封じ込めてある間接音=ホールトーンを、定位なき広がりをもってく(復元)し、実に自然に豊かにリアスピーカーから放射することが可能になっています。
実に正統的で音楽的な、擬似を超えるコンパーティッド4ch(ディスクリートなオリジナル4chに対して)の誕生です。
そして、リアから音を出したがる4ch分裂症のお別れ、4ch遊びの終わり。
クォードイフェクトを「ホール」にすると、音楽専用のこのBSE回路ですが、「サラウンド」にすると、リアスピーカーに音が人工的に定位し、ドキュメンタリーものやポピュラーなどにおもしろい効果を発揮します。
音と遊び、音と戯れたりするのも、時には楽しいものです。
鈴虫の声に取り囲まれてみたり、ジャンボジェットに頭上を飛行させたり。
いずれにしても、私たちのクォードライザーなら、高品位で音楽的な豊穣なる響きを満喫していただけます。

アカイ編

アカイが考えるサラウンドステレオとは?
2チャンネルマニアのための合理的な4チャンネル化作戦

テープレコーダーは、本来多チャンネル

4チャンネル、8チャンネル、16チャンネル。
テープレコーダーには古くから多チャンネルがあった。
実際には、これらの多チャンネルで録音・再生したものを、モノラルや2チャンネルステレオにミキシングして、放送やレコードなどに音を流している。
どういうことかといえば、我々がモノラルで聴く音楽も、多チャンネルで録音したものをミキサーと呼ばれる特殊技能を持った人が加工したもの。
ミキサーの主観によるとはいうものの、プロの計算で理想的に加工するわけだから、悪かろうはずがない。
いずれにしても、このミキシング過程でわかるように、音楽への忠実度を追求すればするほど、多チャンネル化が必然なのだ。
かといって、一般のオーディオファンにプロと同様の多チャンネル装置を押し付けることには限度がある。
また有効に使いこなせるとも考えられない。
結局、4チャンネルは、新しいひとつの妥協点といえるだろう。
2チャンネルステレオよりもいっそう忠実な音を楽しみたい、グレードアップコストも許容範囲を出ないという要求を満たすことができるからだ。

缶詰の果物は復元しえない
音は空気の振動だから、我々が聞くときは一定の方向からではなく、床や、天井、横、後ろ、あらゆる方向からごくわずかの時間(位相)がずれて耳に入ってくる。
当然、大きな演奏ホール、小さなホール、日本間などでは、すべて音質が違ってくるわけだ。
マトリックスを使って残響成分を後方のスピーカーから出す方法がある。
けれどもこれでは「缶詰にした音」の域を出ない。
「缶詰にした音」という意味は、つまり、果物に例を取ってみるとわかりやすくなる。
生の果物と缶詰にした果物と、どちらが元の姿・味に忠実か、を考えてみよう。
どちらがおいしいかという基準で比較すると、缶詰にした果物の方を採る人もいるだろうが、肝心なことは元の姿・味に忠実かどうかを基準にしていることだ。
マトリックス方式では、加工された音を一度分離して後ろ、あるいは横から出そうとするわけで、いわば缶詰の中の果物をいくら広げてみても缶詰は缶詰で、結局生にならない。
多少、音は違ってくるが。
そこで、少しでも生の音、すなわち演奏会場の客席あるいは指揮者の位置で聞いた音に近づける点で、今のところ最適だと考えられるのがディスクリート方式の多チャンネル。
ディスクリートは、まったく分離したことで、テープレコーダーにとって4つの録音・再生は簡単なことといえる。
ヘッドとアンプが4つずつあればいいのだから。
そういったわけで、リスナーもまたミキサーの気分になれる4チャンネルなのだ。
いっそう部屋にマッチした音にミキシングできる、つまり、より忠実に再生できることにつながる。
今後アカイは、このディスクリート方式を基本にした機種をメインに力を注ぐことになるだろう。

三菱編

1968年秋、業界初の4chデモンストレーション

1968年秋のエレクトロニクスショー、三菱電機の展示ルームにおいて、業界初のディスクリート4チャンネルのデモンストレーションが行われました。
この話題は、当時オーディオ専門誌はもとより、各種新聞雑誌に取り上げられ新しい音の世界の幕開けとしてたいへんな反響を呼びましたので、ご存知のマニアも多いことでしょう。
以後私たちは公開録音・スタジオ録音・屋外録音などを繰り返し、さまざまな録音条件と再生音場との関係から、4チャンネルステレオのあらゆる研究、実験を続けてきました。
さらに、全国各地で数多くのデモンストレーションを開催、とくに1970年秋、銀座四丁目三菱スカイリングにおけるSL(蒸気機関車)ショーは人気を集めました。
スカイリングの壁面に、ぎっしりと埋め込まれたP-610Aが、SLの力強い姿を音響によって眼前に描き出したものです。
新しい音の世界を創造する4チャンネルステレオ、私たち三菱電機は、そのための新しい技術の開発に専念しています。

4年間の実験・研究、4チャンネルステレオ、三菱の結論

休みなく研究・実験を続けてきた三菱電機は、4チャンネルステレオについて、ひとつの結論に到達しました。
それをご紹介する前に4チャンネルがなぜ生まれてこなければならなかったのかを考えてみましょう。
原音場での原音を、自分のリスニングルームに再現すること、これが普通に一般にマニアの音楽再生の目標になっています。
ところが2チャンネル方式では、音の方向感・広がり・残響感などの情報を十分に伝送するには、どうしても無理があったわけです。
そこで三菱電機は、再生系の理想として次のような条件を満足させようと考えました。
(1)音の方向感の情報
(2)音の残響エンベロープの情報
(3)原音場の音をリスニングルームに伝送する補正器の開発
原音をできるだけ変化させずに再生しようとする従来のHi-Fi再生に加えて、より多くの情緒的情報を含んだ音場を再生するには、そして考え出されたのが4チャンネルステレオなのです。
私たち三菱電機は、1968年4チャンネルを発表して以来、今日まで、この考えに誤りが無かったかをじっくりと確かめながら進んできました。
そしてその確認を元に、初めて本格的に市販用4チャンネルステレオ機器の開発に取り組んだわけです。
これからご紹介しますQM-4方式は、これら技術の結晶であり、私たちの4チャンネルステレオに対する結論でもあるのです。

これから図を駆使してのQM-4方式の説明が延々とつづられているが、図が無いと説明不可能なので、省略します。

QM-4方式の原理は、まず左右に別れている2チャンネル信号を、フェーズシフト(音の出るタイミングをずらす)回路を通して4チャンネル分の信号に分離します。
次にマトリックス回路を通して、それぞれのスピーカーのための信号を作り出すわけです。

ナショナル編

4チャンネルはおおいに気になっているのですが

Q)今日は4チャンネルについて、いろいろお話をお伺いしたいのですが、実のところ、私自身もまだ半信半疑でして、手を出したものかどうか、迷っているところなのです。
しかし、雑誌などを見ますと、やはり無関心ではいられないですね。
今回はちょうど良い機会だと思って、志願してやってきたのですよ。
4チャンネルについては、まったくの白紙でして、お相手が務まるかどうか、心もとないのですが、よろしくお願いいたします。

A)こう言っては失礼ですが、あなたのような方が、案外たくさんいらっしゃるんじゃないかという気がしますね。
我々が、新しい実験を次々に進めてゆくのは仕事ですから当たり前のことですが、一般の方は、それをじっくり傍観した上で、気に入ったものを取り入れてゆけばよいわけですが、新しいものにすぐに飛びつきたいのが、これまた人情ですから、ごもっともなことですね。

Q)4チャンネルにしても、自分で実際に試してみようと思えば、最低、新たにスピーカーを2本用意しなければならないでしょう。
そうなると、やはり将来の見通しも気になるわけで。

A)それは当然ですね、ところが4チャンネルの場合は、まだ滑り出したばかりで、具体的にどういう形に落ち着くか、予断を許さない面があるんですね。

Q)しかし、いずれにしても、私どもとすれば、今まで築いてきたオーディオも大事にしたいですね。

A)わかりますね。
4チャンネルにおぶさるのではなく、今まで進めてきた基盤の上に、その効果を相乗させるというのが、妥当な考え方でしょうね。

ソースに依存する4チャンネル、しない4チャンネル
Q)4チャンネルを「4本のスピーカーで再生する新しいステレオ」という風に、単純に割り切れば、別にこだわることもないと思いますが、段階を踏みながらオーディオを楽しんできている者には、その路線での流れがやはり気になりますね。

A)読者の方も皆さんそうだろうと思いますね。
我々も、やはりそうなんですよ。
迎る通り、セットものの場合は、新しい一つの形体として扱うこともできますが、コンポーネントの場合は、従来の危機やソースの存在を抜きにしては考えられません。

Q)ステレオが現れた当時のことを思い出しますね。
それよりも今度の4チャンネルの方が事情は複雑なようですが。

A)LPレコードにしても、ステレオレコードにしても、ソース側が先に完成していましたから、それをいかに忠実に再生するかに問題が絞られていたわけですね。

Q)オーディオというのは、もともと与えられたソースをいかに再生するか、という再生側の趣味だと思うのですが。

A)今度の4チャンネルでは、そのソースがもうひとつしっかり固まっていないわけで、オーディオという再生の舞台に、楽屋裏の混乱が洩れてきている、とう感じがしないでもありませんね。(笑)

Q)まあ、その辺は過度期のことですからやむを得ないのでしょうが、それにしてももう少し整理されないと、取付く側としても身が入りませんね。

A)しかし、考え方によっては、それほどややこしいことでもないんですよ。
現在の4チャンネルをごく素朴に分類すると、ソースに関係の無い4チャンネルと、ソースに依存する4チャンネルとに大別することができるようですね。

Q)ソースに依存しないということは、従来のステレオソースを対象にした4チャンネル、ということですか。

A)そうです。
細かく分けると方式もいろいろあるようですが、とにかく2チャンネルのソースから、間接音の成分を取り出して、それを独立したチャンネルに乗せるという方法ですね。

Q)再生側で処理するわけですね。それは。

A)そうです。いわゆる2-2-4方式です。

Q)それですと、従来のオーディオの路線を発展させたものとして、素直に受け入れられる気がしますね。
「音作り」の一種だと考えれば、いいわけですから。

A)「音場作り」ということになるかもしれませんが、とにかく、再生装置の能力で新しい効果を引き出すわけですから、そういう見方も成り立つかもしれませんね。

Q)新しいプリメインアンプ(SU-3100/SU-3404)には、その回路が内蔵されているようですが、「音場作り」のための付属回路としてみれば、なかなか魅力がありますね。
このアダプター(SH-3400)は、手持ちのプリメインアンプに組み合わせて使えるわけですね。
ところで、松下電器ではどんな方式を?

A)基本的にはマトリックス方式です。
マトリックス方式というのは、左と右の信号を分解し、これを適当に足したりひいたりして、4チャンネル化する方式です。
2チャンネルのソースに含まれている直接音と間接音の成分を4本のスピーカーに振り分けて、音場の再現を図ろうというものです。

Q)マトリックス方式というのはこうした2-2-4方式の再生の場合に用いられるのですか。

A)いいえ、ソース側でもこの原理による実験が進められており、いずれマトリックス方式のディスクも発売されると思います。

Q)4チャンネル専用のディスクですか。

A)4チャンネルの信号をいったん2チャンネルに変換(エンコード)して録音する方式で2チャンネルとしても使えます。
4チャンネルで再生する場合は、先のマトリックス回路で分離(デコード)させるわけです。 
これを2-2-4方式に対して、4-2-4方式といっています。

Q)それでは、マトリックス回路を備えたアンプかアダプターを用意しておけば、どちらにも使えるわけですね。

A)そうなんですが、4-2-4方式で重要な要素となっている、左右の広がり、前後の奥行を決める係数が、まだ統一されていませんので、この点に問題があります。

Q)それはまた難儀なことですね。

A)この問題を解決しようとしうことで開発したのがSH-3400に採用しているAFDコントロールです。
これによって、その係数が自由に変えられますから、どんな値に落ち着いても、この場合は全部に対応させられます。

Q)そうでなくては困りますね。
その点、テープの方は、はっきりしていますね。

A)専用のトラックがあるわけですから、その配置の問題だけですね。
このように、チャンネル間がはっきり分離しているものをディスクリート方式と呼んでいますが、結局、4チャンネルも、先のマトリックス方式と、このディスクリート方式に納まるんじゃないでしょうか。
このほか、遅延装置によって残響成分を付加する方式もありますが、これは、便宜上、擬似4チャンネルとして区別されているようですね。

Q)これで少しは、4チャンネルというものがわかったような気になってきました。

ソニー編

ソニーのマトリクス4チャンネルはSQ方式です

数あるマトリックス方式4チャンネルの中で、その素性がすぐれ、多くの特長を持った、CBSのSQ方式。
オリジナルなアイデアは米国CBSのものですが、ソニーのハードウェア技術とがっちり手を結び、より進んだすばらしいシステムに成長しました。
現在、レコードを主とするソフトウェア面、再生機機を主とするハードウェア面、双方とも混乱しているマトリックス4チャンネルにおいて、最大のソフトウェアメーカーCBSと技術力で卓越するソニーのハードウェアが結合することによって、大きな光がさしはじめました。
音響技術の進歩、4チャンネルステレオ。
すばらしい音をより多くの人に楽しんでいただくために、ソニーは最善の道を歩んでいると自負しています。
どうぞ、SQステレオに御期待ください。

SQ方式の特長

●完全コンパチビリティ

従来のステレオとはもとより、モノラルレコードとも完全な両立性があり、プレーヤーなどすべてが相互に使用できる。
●左右のセパレーションが良い
普通の2チャンネル、ステレオと同等の定位感が得られる。
●4つのスピーカーが完全対等
サラウンド効果が大きく、ディスクリート方式に最も近いサラウンド効果が得られる。
●聴感上の不快感がない
人間の耳に不快な逆相音に対し十分配慮されているため、心地よい音が得られる。
●音を円周上に回させる
音像を周状に大きな環として回せるためポピュラー音楽、効果音などでも十分新しい表現ができる。

ソニーのSQ方式による製品について

従来の2チャンネル、システムを使って4チャンネル化するデコーダー、新しい4チャンネルシステムなど、今秋からぞくぞく登場します。
どうぞ御期待ください。
なお、すでにお手元のソニー音響製品にはすべて使用可能なアダプターを用意いたします。


【あとがき】

 1971年当時の雑誌記事を参照してこのページを作成したのだが、この雑誌の各メーカーの広告の力の入れようは何だ???
 巻頭の日本ビクターなど、17ページにも及ぶ広告である。
 コロムビアは8ページ、パイオニアも8ページ、東芝は4ページ、サンスイも4ページ、オンキョーは8ページ、日立(Lo−D)も8ページ、トリオ(現・ケンウッド)も8ページ、三洋(OTTO)も8ページ、アカイ、三菱、松下も8ページ、ソニーはモノクロで4ページというものである。

 ソニーの広告文章など、とても1971年の文章とは思えない。
 「サラウンド」「ハードウェア」「ソフトウェア」など、80年代に入ってようやくメジャーになった単語である。

 どのメーカーも「我こそが本流」という感じで文章が書いてあるのが実に興味深い。
 


【オーナーのご意見】 情報御提供はyokoyama様です。

4チャンネルステレオは、あっと言う間に亡くなってしまいましたが、私の知っている範囲では、ひとつだけ、現在につながる贈り物を残していってくれました。

それは、LPカートリッジやアンプの位相特性の改善です。
CD-4 LP レコードでは、2チャンネルステレオとの互換をとるために、新しく加えられた2チャンネルの情報を、20-40 KHz の帯域に載せていました。
そのため、カートリッジもプリアンプも、その帯域を可能な限り正確に再生し、それを4チャンネルデコーダ出力する役割を負わされたのです。
旧来のアンプカートリッジで CD-4 LP レコードを再生すると、当然とんでもない歪みのある雑音が発生するため、CD-4 レコードを多く出していたビクター(だったと思いますが、記憶は定かではない。)は、そのクレームの対応に大変だったようです。
いずれにせよ、その後のLPカートリッジやイコライザアンプ(プリアンプ)の性能向上の一因となっているかと思います。

筆者より
 貴重な意見、ありがとうございました。
 これだけのメーカーが踊った4チャンネルステレオが無駄ではなかったことがよくわかりました。


追加取材


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